フェレットと暮らしたいとお考えの方へ

フェレットをお迎えする前に、知っておきたい基本知識。

しなやかで愛らしいフェレットは、おだやかで人なつこい性格をしています。また、めったに鳴かず、日中ひとりでお留守番してもストレスにならないので、ペットははじめてという方でもいっしょに暮らしやすい動物です。

フェレットと人類の歴史

フェレットはヨーロッパケナガイタチをルーツとする動物です。学名をMustela putorius furoといい、現在のフェレットはすべて家畜で、野生種はいません。数少ない家畜化された肉食動物の一種です。

完全な肉食動物なので、獲物を倒さなければ生きていけないため、とても賢く、もの覚えがいい動物です。芸ができるコも珍しくありません。

今から3000年前にはエジプトなどで飼われていたという記録があり、人類と長い歴史をともに歩んできています。昔は、穴の中にいる獲物を追い出して狩りを助ける役割を果たしていました。近年になってからは、航海時の大敵となるネズミ駆除にフェレットを乗せている船が多かったようです。また、細いパイプの中に電線を通す仕事をしていたフェレットたちもいました。身体に紐をつけてパイプに入れ、反対側から呼ぶとフェレットが走ってきます。それを抱き留めて、パイプに残った紐で電線を通します。人になつき、しなやかな身体で細い穴の中を駆け回るのが好きなフェレットの性質をうまく使った仕事です。

この仕事は現代でも使用されることがあり、イギリスでのミレニアムコンサート(2000年)ロンドンのグリニッジ公園での配線工事やダイアナ妃とチャールズ皇太子の結婚式の際にも、ロイヤルパークの配線工事で活躍しています。

肉食動物でありながら、空腹時に人を襲うこともないおだやかな性格や、人がともに暮らすのに適切な大きさと人なつこさがフェレットと人間がともに歩んだ長い歴史に役立っていたのだと思います。犬猫と違い、炭水化物を多く摂取してしまうと体調を崩すこともあり、フードの問題が大きかったのですが、現在ではフェレットのための良質なフードが出回り始めたこともあって、より飼いやすくなっています。

解剖学的・生理学的なフェレットの特性

体格

日本でコンパニオンアニマルとして手に入るフェレットはほとんど避妊・去勢の手術済です。オスは1kg~1.2kg程度、メスは600g~800g程度の体重です。大きさがこのサイズとは違う個体もいないではないのですが、大体においてほぼ一定です。

やわらかい体

頸椎はもちろん、胸椎や腰椎も非常に柔軟です。そのため、狭いチューブの中などでも容易に180度の旋回が可能です。哺乳類のコンパニオンアニマルとして一般的な動物の中で、胸椎をあれほど自由に曲げることの出来る動物はフェレットの他にいないのではないかと思います。

短い腸管

フェレットの腸は短く、小腸は約2メートル弱しかありませんし、大腸も約10センチ余りしかありません。そのため、フードの消化管通過時間は短く、おおよそ3時間から5時間程度で糞として排泄されます。
そのせいか腸内細菌叢が単純で、善玉菌や悪玉菌の種類が少ないとされています。そのため下痢症が発生しやすい反面、抗生物質による下痢の発生は少ないとされています。

泌尿器

フェレットは膀胱に、約10mlの尿を貯めることができます。
オスのペニスには陰茎骨と呼ばれるJ字型の骨が存在し、先端は返しのついた釣り針のような形状です。そのため、尿道カテーテルを挿入するためには特殊なコツが必要となります。

視覚

以前、フェレットの視力はあまり良くないと言われていましたが、最近は比較的良いとする説が有力になっています。フェレットの先祖が、薄暗くなってから小動物の狩りをすることが可能な視力を持っていたことが根拠となっています。特に敏感に反応する速度は、小動物の動く速度である毎秒25cm~45cmと言われています。

飼育環境

フェレットは頭の幅の隙間があればそこに入る込む行動を取ります。ぱっと見ただけでは到底入れそうもない狭い穴に入り込むため、フェレットが生活したり遊んだりする空間がフェレットにとって安全であるかを確認する必要があります。
布団や毛布、そしてカーペットやラグの下の空間に潜り込む行動もよく見られます。フェレットを室内に放している場合は、下にフェレットがいるかも知れないと十分に注意しましょう。

また、フェレットはゴムやシリコン、発泡スチロールなどをかじる性質があります。特に1歳未満の若いフェレットは、こうしたものを誤食して消化管内閉塞を起こす率が高いので、くれぐれもこうしたものがフェレットの周辺に存在しないようにすることが大切です。

犬猫用のゴム製のおもちゃはタブーです。代わりに布や金属、または固いプラスチックのおもちゃを与えるようにしてください。
遊びと言えば、フェレットは円筒状のものの中をくぐり抜けることが大好きです。チューブ状のおもちゃを連結すると、そこで非常に活発に運動をするようになります。

栄養

フェレットは完全な肉食動物です。そのため、小動物を丸ごと摂取することで完全な栄養をまかなうことが出来るようにできています。

また、祖先のケナガイタチは、獲物を巣に持ち帰り、少しずつ頻繁に食べるという習性をもっており、これはフェレットにも当てはまります。多くのフェレットは1日に5~6回、食餌を摂取し、1回の量は少量です。また、フードを特定の場所に隠して置くこともよくあり、飼い主が注意していないと部屋の隅やソファの下などにカビの発生した大量のフードを発見することになる場合もあります。

腸管が短く、消化管通過時間も数時間と短時間であり、小腸の粘膜表面にある刷子縁と呼ばれる部位には人などと違い糖類を分解する酵素がほとんど存在しません。このためフェレットは、炭水化物を栄養源として利用することが苦手です。そこで、フェレットはエネルギー源として、脂肪とタンパク質を利用します。ですから、フェレットには良質の脂肪と蛋白質を多く含み、なおかつ最小限の炭水化物を含む食餌を与える必要があります。
炭水化物が過剰なフードを摂取し続けると、インスリノーマの罹患率が増加する可能性につながるという報告もあります。同じように、糖分が多く含まれる果物が原料のオヤツなども糖と植物繊維の過剰摂取となりますので、与えるのは止めておいた方がいいでしょう。

また、フェレットは生後4ヶ月までに食餌の好みができあがると言われている為、大人になってからのフードの変更は難しいことが多いようです。幼いうちにさまざまな種類のフードにならしておくことで、お気に入りフードの味の変更や販売中止などがあっても安心できます。

日常のお世話

特別なお世話は必要なく、清潔に保ち、フードとお水をきちんと与えていれば大丈夫です。季節に係わらずケージが直射日光に当たらないようにして、真夏や真冬は室温のコントロールに気を付けてあげるくらいです。この室温も人間が快適に過ごせる程度で構いません。但し一日中通して室温をコントロールすることが大切です。

フードはいつでも食べられるように

フェレットは獲物を巣穴に持ち帰って少しずつ食べる習性を持っているため、時間を決めて一日何度か与えるといった方法ではうまくいかないことが多いのです。たいていのフェレットは食べ過ぎたりしないため、いつでも食べられるようにフードを置いておいてあげる方法でうまくいきます。
市販されているフードはドッグフードやキャットフードのように品質の差が大きくはないので、そのコの好みや体質などに合わせてメーカーを選んであげましょう。

フェレットとの遊びについて

普段はケージの中で過ごし、時間を見つけて部屋に放して遊び、またケージに戻すという暮らし方をおすすめしています。入れるとは思えないような隙間にも入り込んでしまうので、どこにいるかいつも把握してあげないと思わぬ事故にもつながりますし、脱走の危険性も高まります。

フェレットのお留守番

フェレットは人になつきますが、長時間ひとりで過ごしてもストレスにならない動物です。そのため、日中はお仕事で留守がちな方でも安心してフェレットと暮らすことができます。

旅行については、1泊くらいであれば、室温を管理してフードや水をたっぷり用意してあげることでお留守番ができます。それより長く留守をする場合にはペットホテルに預けるのが一般的です。当院ではホテルでのお預かりをしていませんが、お迎えしたペットショップがお預かりのホテルサービスを行っていることが多いので、そうしたところに預ければ安心です。

先住のコとの相性

ほとんどのフェレットは怖いもの知らずですし、犬猫ともほとんどの場合うまくいっしょに暮らせます。院長の家でも、フェレットと猫が仲良く暮らしていますし、くらた動物病院で診療してきた中で犬猫と大怪我をするようなトラブルを起こしたという話は聞いたことがありません。ただし、テリアなどイタチを獲物とする狩りに使われていた犬種と暮らす場合には注意が必要かもしれません。

また、フェレットよりも小さい動物(ハムスターなどの小動物)と接触させることは小動物がフェレットの攻撃を受ける危険を伴う可能性が高いです。

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