病気と症状 予防と健康診断

くらた動物病院は、健康診断や予防から高度医療も含めた専門的なフェレットの診療を行っています。

フェレットの三大疾病と呼ばれているインスリノーマ、副腎疾患、リンパ腫をはじめ、日本有数の症例数を持つ長年の経験を活かした専門的なフェレット診療を行っています。予防や健康診断による病気の早期発見などもご安心してお任せいただけます。

予防と健康診断

健康診断

フェレットは人間の10倍のスピードで年を取りますので、健康診断が重要です。3歳までは年に1度、ワクチン接種の際に健康診断を受けることをおすすめしています。4歳からは年に1度の頻度で血液検査を含めた健康診断を受けると安心です。6歳からは半年に1度は血液検査を受けた方が良いでしょう。

フェレットは一見健康に見える状態での健康診断でトラブルが見つかることが比較的多い動物です。早期に発見してあげることで、つらい症状を出さずに治療できることも珍しくありません。

例えば、フェレットは無症状でありながら胃内に毛玉や異物が存在していたり、腹腔内に腫瘍が発生している場合が珍しくありません。これらについて経験豊富な獣医師が健康診断の際に、触診するだけで、早期の発見に結びつく事がしばしばあります。

 

予防

フェレットは犬のジステンパーにかかります。また、稀にですがフィラリア症になることもあります。そのため、ジステンパーの予防接種と、蚊の発生する時期のフィラリア症予防薬の投与をおすすめしています。

また、家の中と外を出入り自由な猫や散歩に行く犬と一緒に暮らしているフェレットの場合には、外からノミやダニが家の中に持ち込まれてフェレットに寄生する場合があるので、皮膚表面に寄生がないかどうかのチェックが必要です。もしも寄生が見つかった場合には、駆除薬を使用します。

予防の際には、健康状態をチェックし、ケアについてのアドバイスも行っています。

フェレットの病気

本格的に日本へフェレットが入ってきた1995年から、一貫して重点的にフェレットの診療をしてきました。フェレットには高度医療を受けられる施設がないため、当院が飼い主さまにとって「最後の砦」となれるように日々精進しております。他院からの紹介症例も積極的に受け入れています。こうしたご信頼に高いレベルでお応え続けることができるよう、現在も最新の情報を貪欲に収集し、勉強を続けています。

フェレットの三大疾病

フェレットがかかりやすい病気は、インスリノーマ、副腎疾患、リンパ腫だと言われています。

インスリノーマ

どんな病気?
インスリノーマは、血糖値が低下する疾患で、膵臓に発生したインスリノーマと呼ばれる腫瘍が原因です。インスリノーマは、約4歳以上の中高齢期になったフェレットに多発する傾向があります。

症状は?
老化のような症状と、低血糖に誘発された交感神経の異常な興奮による症状があります。

・老化と間違えやすい症状
数ヶ月前と比較して最近、フェレットの活動性が低下している
後ろ足の踏ん張りが利かなくなっている
寝起きで歩き始めた時に、ふらついている

・興奮による症状
心拍数の異常な上昇
呼吸数の異常な増加(呼吸速迫)
パッドなどを含めた全身の皮膚の発赤
ヨダレの増加
ぐったりとした虚脱状態
発作様の症状

治療
大多数の場合、インスリノーマは投薬によって安定した良好な生活の質を維持することができます。つまり、長期間のケアが必要となる慢性疾患と考えられます。
こうした内科的治療を優先し、インスリノーマを摘出する外科的治療はほとんど行っていません。

もっとくわしく知りたい方はこちら⇒
http://www.kurata-vet.com/blog/2013/10/post-11-661641.html

副腎腫瘍

どんな病気?
フェレットという動物種特有の発生頻度の高い疾患です。犬の副腎腫瘍と違い、ほぼ全ての症状は副腎腫瘍から分泌される性ホルモンの作用による症状となります。

症状は?
脱毛(正確には発毛不全)
外陰部の肥大
乳首の発赤
排尿障害
体臭の変化

治療
病状に応じて、またそのコの体調や年齢を考慮に入れて、内科的治療と外科的治療から選択します。手術を選択した場合、副腎腫瘍の摘出後、時間経過とともに反対側の副腎が再度腫瘍化することがありますが、手術時の年齢が5歳以上であることが非常に多いため、反対側の副腎の腫瘍化が確認された時点で既に7歳から8歳齢であることが多く、結果として腫瘍の増大が寿命を短縮してしまったという症例を当院では見たことはありません。なお、ホルモンに起因する薄毛や外陰部腫大などの臨床症状はリュープリンによって寿命まで十分にコントロールが可能です。

手術について
副腎腫瘍の手術は、副腎腫瘍に分布する血管の処理をていねいに実施することが不可欠ですので、経験がとても重要になってくる手術です。症例によってほぼ無出血で終えることもできますが、目視可能限界ギリギリの細い血管であっても、動脈性の栄養血管であった場合には想像以上の出血を来す場合があります。さらに、血管切断端が脂肪組織の中に引き込まれるため、止血処置が困難となり、さらに止血処置に時間を取られて手術時間の延長もきたします。細い血管といえども不用意に切断して出血させず、その前にしっかり結紮するなどの止血処置が大切です。当院では長いキャリアや実績をもとにていねいで正確な手術を行っています。

もっとくわしく知りたい方はこちら⇒
http://www.kurata-vet.com/blog/2013/10/post-10-646823.html

リンパ腫

 

リンパ腫は免疫機能を司る白血球という血液細胞の一種であるリンパ球が悪性腫瘍となる病気です。
一言で表現すると血液の癌です。
腫瘍化したリンパ球は全身に広がる可能性があり、様々な部位で増殖します。
リンパ腫の増殖が阻止できない場合には、リンパ腫は進行性に体を蝕み、最終的には命を奪います。

症状
腫瘍化したリンパ球が増殖する部位によって様々な症状が出ます。
ほぼ共通して発生する症状としては
元気・食欲の低下、体重減少、微熱、貧血の発生などが挙げられますが、どれもリンパ腫特有の症状ではありませんので、動物病院での詳しい検査が必要となります。

発生部位
胸腔内リンパ節(縦隔リンパ節など)、腹腔内リンパ節(腸間膜リンパ節など)、体表リンパ節、
肝臓、脾臓、腎臓、など、全身の臓器に発生する可能性があります。脳脊髄での発生も稀に遭遇します。

臨床経過
リンパ腫のフェレットはそれぞれ異なる臨床経過を辿ります。私自身の経験でも、同じ臨床経過のフェレットを経験したことはありません。
言い換えれば、治療を開始するに当たって、あらかじめその子の臨床経過を予想することは非常に難しい事であると言えます。

一般論として、リンパ腫は臨床経過が穏やかな低悪性度のリンパ腫と、そうではなくて激しい臨床経過を辿り急速に死の転機を辿る高悪性度のリンパ腫に分類されます。
それぞれに応じた治療法を選択することが重要となります。

リンパ腫を治療する上で強調しなければならないことは、完全に治癒すること(完治)を期待することが難しい疾患であるということです。何故ならば、どれほど良好な治療効果が発揮されたとしても、体内から完全にリンパ腫の腫瘍細胞を排除することが極めて困難であるからです。
結果として、残存している僅かな腫瘍細胞からの再発が発生することになります。

完治が困難であるため、治療効果を表現する特別な言葉を使用します。
治療によってリンパ腫病変が小さくなっていくことを寛解若しくは部分寛解と言います。
さらに、レントゲンや超音波検査、血液検査などで検出が出来なくなることを完全寛解と言います。

フェレットのリンパ腫の治療においては、治療の第一の目標は可能な限り早期に完全寛解の状態にすることです。この治療期間を導入期と言います。
完全寛解になった状態のフェレットは、生活の質はほぼ正常な状態にまで改善しています。
一方で、残念ながら治療を開始しても効果が発現せず、数週間の経過で亡くなる場合もあります。
またさらに、治療が奏功し完全寛解状態になっても、顕微鏡レベルでの微小な腫瘍組織は残存していると考えられるので、その後の再発のリスクは否定できません。
私たちの治療の次の目標は、完全寛解によって改善した生活の質の状態をいかに長く継続させるかという点になります。この期間を維持期と言います。この維持期の治療(維持療法)は、多くの場合には半年間ほど継続します。

経験的には、完全寛解になった後、1年、2年と再発せずに元気でいるフェレットもいます。事実上完治したと表現出来得る場合もあります。

以上の通り、リンパ腫は治療開始時に正確な予後の予想が困難であり、尚且つ治療効果の良し悪しの差が非常に大きく発現する疾患であると言えます。
効果の発現に関して不確定要素の非常に多い疾患ですが、多数のフェレットのリンパ腫の症例を診療してきた経験からは、フェレットのリンパ腫は積極的な治療を検討するべき疾患であるということを強調させていただきたいと思います。

積極的な治療をお勧めする理由の一つとしては、大多数のリンパ腫のフェレットは、発見後適切な治療を受けない限り残された余命は非常に短く、経験上は数週間から1ヶ月前後で亡くなるという事実に基づきます。
もう一つの理由は、確かに治療を行っても治療効果が奏功せず、1ヶ月も経たずに亡くなる場合もありますが、その一方で劇的な治療効果が発生し、その後年単位での余生を元気に送ることができているフェレットも多数経験しているという事実に基づきます。

これらの理由から、フェレットにリンパ腫の診断がなされた場合であっても、当初から悲観的になることなく、積極的な治療を行うことをお勧めしております。

治療方法
フェレットのリンパ腫の治療法は、犬や猫のリンパ腫の治療法と大差はありません。
使用する薬剤は数種類の抗癌剤です。
成書に記載のある標準的な投与方法があり、基本的には標準療法に準じての治療となりますが、その方法に固執することはせず、リンパ腫の状態や全身状態に応じて使用薬剤や投与量や投与間隔などを決定します。
抗癌剤には確かに無視できない副作用発生の可能性があります。
抗癌剤によって発生する骨髄抑制による白血球や血小板の減少や消化器障害による下痢や食欲不振などの症状は、治療経過の途中において十分に発生し得る副作用として挙げられます。
重要な点は、治療によって発生する効果(メリット)と、副作用(デメリット)をいかにバランスよく保ちながら治療を進めて行くかという点にあります。
また、副作用がその子にとって許容範囲であるのか許容範囲を超えているのかについての見極めも非常に重要です。
ある程度の副作用が予想されていても、腫瘍の増殖が急激であり、抗癌剤の作用によってそれを阻止しなければ生命の危険がある場合には、積極的に抗癌剤を投与する判断が必要になる場合もあります。
私は、デメリットがメリットを上回る可能性が高い場合には、仮に腫瘍が小さくなる可能性があったとしても、その治療はその子にとっては不適切であり、実施すべきではないという判断が必要になると考えています。この場合には、メリットとデメリットの詳細について出来得る限りわかり易くご説明いたします。
世間一般では、抗癌剤についての悪いイメージが広まっており、飼い主様からも抗癌剤のデメリットである副作用を非常に心配されていらっしゃるお話を多数お伺いしております。
抗癌剤を使用した治療を進める上で、確かに副作用の問題は避けては通れない問題です。
しかしながら、増殖を続けて体を蝕み命を奪う悪性腫瘍を、体から除外する効果を期待できる極めて有効な治療法であることも紛れも無い事実です。
「抗癌剤を使用したが故に早死にしてしまった」という誤解が生じないように、病状についての詳細を治療の都度ご説明させていただきながら、最善の治療方法をご提案させていただきたいと思います。

 

 

その他の病気

フェレットは身体がしなやかで軽いため、ケガをしにくい動物です。そのため骨折などはほとんどありません。ただし病気については、人間のインフルエンザや犬のジステンパーに感染することがあります。インフルエンザが流行している時期には部屋の湿度を保ち、外出から帰ったら手洗いとうがいをしましょう。

誤飲に注意しましょう!

フェレットはゴムやシリコン、発泡スチロールを噛むのが好きで、そのかけらを飲み込んでしまうこともあります。特に1歳までのフェレットに異物の誤食のトラブルが多発します。もし誤飲に気付いたら、早めにご来院ください。

誤食をした後、異物は胃の出口を通過しようとして出口の組織を刺激します。この刺激によって比較的激しい嘔吐が発症します。この際に異物が胃の出口から胃の中ほどに戻ったり、幸いにも吐き出されてしまえば症状は落ち着きますが、嘔吐の後も元気食欲の回復がなく、むしろ徐々に弱っていく場合には、異物が胃の中から腸管内へと進んでしまい、腸閉塞を発症したと考えられます。

異物誤食の形跡があり、嘔吐や元気食欲の不振が発生した場合には、可能な限り早めに動物病院を受診してください。

こんな症状に気付いたら

フェレットの病気に気付くサインは、『食欲』『元気』の変化が圧倒的に多いようです。他に、ぐったりしている、ふらつくなどで気付かれる場合もあります。

また、前足で口のあたりを引っかくような動作をしている場合は、インスリノーマの他、異物を飲んでしまったり、毛玉が貯まっているなどで気持ちが悪い場合もあります。このしぐさに気付いたらご来院ください。